吉増剛造,マリリア【葉書Ciné】#17「白い蛾の心をお伝えしてみます」2020.8.20(Quintafeira)

当動画の編集と運営は、書肆吉成とコトニ社が共同で行っています。

詩人・吉増剛造さんとシンガーソングライター・マリリアさんのgozo’s DOMUSというチャンネルで、 2020年4月30日より毎週木曜日に映像詩「葉書Ciné」をアップしています。

マリリアさんの歌は「山の神」(『彼岸から』1985)より

葉書詩 吉成秀夫氏に。 13 AUG 2020

”白(しろ)い蛾(が)のこころがみえた、……”といい直したのは、イエーツの詩句が、立原道造さんの『勿忘草(わすれなぐさ)に寄す』の、…女の人が、蛾(が)を追う手振(てぶり)に変幻(へんげん)していたのは確実(かくじつ)だった。「歌(うた)」の覚(おぼ)え方(かた)の不思議(ふしぎ)なのかしら…ね。天地の小声の不思議と、わたくしたちの小声の奥深さよ、…。これは内蔵言語の小天地の声であったのかも知れなかった。ゴゾ

-映像の中の言葉-
隣人 第33号
暑い日ですね。
菅井憲一
鈴慕の曲
声の分析
白い蛾の舞うころに
クリント・イーストウッド
WBイェイツ
最果タヒ「一等星の詩」
白い蛾のとぶ姿が
白い蛾の心にみえたひに
言いちがえ
キッチン用ハッカの除菌水
鈴を慕う
呼吸が変わる
小鳥
蝉さんの声もちょっと抒情的になって長引いているね
Cicada
鳴き声の喉の奥の沈黙の言葉に耳を澄ましてみます。
佃公園
内臓の沈黙の言語

以下は、葉書詩の参考として引用します。

『萱草に寄す』立原道造

SONATINE No.1

 はじめてのものに

ささやかな地異は そのかたみに
灰を降らした この村に ひとしきり
灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた

その夜 月は明かつたが 私はひとと
窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)
部屋の隅々に 峡谷のやうに 光と
よくひびく笑ひ声が溢れてゐた

――人の心を知ることは……人の心とは……
私は そのひとが蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
把へようとするのだらうか 何かいぶかしかつた

いかな日にみねに灰の煙の立ち初めたか
火の山の物語と……また幾夜さかは 果して夢に
その夜習つたエリーザベトの物語を織つた