大きな山。誰の目にも明らかであるはずの大きな山ですが、意外にも北海道の歴史のなかで、二つの山が消されたことがあります。
どういうことかといいますと、いずれも戦争によって、表象の隠ぺい、秘匿、不可能という例外状況に置かれたのでした。
一つは戦略的に重要なチョークポイントの地勢にある山に要塞が築かれたからで、もう一つは敗色濃き戦時下で人心の不安を避けるためです。
二つの山にたいして、実際にイメージ(写真や絵図)がどうだったかを見てゆきます。
途中、佐藤泰志の小説「海炭市叙景」に寄り道します。
ところで、本編では触れていませんが、北海道の山は、古来「チャシ」といってアイヌの人たちにおいても要塞であったり館や砦が置かれたりと、要地として機能していました。近代にうつり、戦争の時代に入ってもその性格が引き継がれたと考えることができます。
「チャシ」については宇田川洋さんの研究が詳しいです。いつかこのチャンネルでも紹介したいものです。
どうぞお楽しみください。
紹介文献は以下です。
函館の古地図と絵図 市立函館図書館蔵(吉村博道・撮影、千代肇・略年表)道映写真、1988年
函館・道南大事典(須藤隆仙監修、南北海道史研究会編)国書刊行会、昭和60年
はこだて写真帳(北海道新聞社編)北海道新聞社、2010年
箱館写真のはじまり 幕末から明治 (佐藤清一)五稜郭タワー株式会社、平成11年
函館 都市の記憶(函館市史編さん室編)函館市文化・スポーツ振興財団、平成4年
なぜ、北海道はミステリー作家の宝庫なのか?(鷲田小彌太、井上美香)亜璃西社、2009年
佐藤泰志作品集、クレイン、2007年
昭和新山生成日記 復刻増補版 昭和新山誕生の全観察記録 附:有珠火山活動概史、昭和新山活動日記(三松正夫)三松正夫記念館、平成5年
火の山(手塚治虫漫画全集)講談社、1983年
北海道駒ヶ岳噴火史(小井田武編)北海道森町、2003年
北の火の山(小池省二)中西出版、1988年復刻版