吉増剛造,マリリア【葉書Ciné】#12「泉鏡花、マルグリット・デュラス、芥川龍之介は、大河の、川の、水の大作家である」2020.7.16(Quintafeira)

https://www.youtube.com/watch?v=1oLVcRzKzTY

当動画の編集と運営は、書肆吉成とコトニ社が共同で行っています。

詩人・吉増剛造さんとシンガーソングライター・マリリアさんのgozo’s DOMUSというチャンネルで、 2020年4月30日より毎週木曜日に映像詩「葉書Ciné」をアップしています。

葉書詩 吉成秀夫氏宛
アンリ・ベルグソンに”純粋持続”という思想があるのだけれども、これも十三年振りにgozoCineの鏡花篇(四)を、多摩川の濁流をみ直そうとしてゆっくりみてみて、驚いた、……。”みえない持続”ということもあって、アレッ、わたくしの目は泉鏡花、マルグリット・デュラス、芥川龍之介は、大河の、川の、水の大作家であることに、わたくしもまた知っていたことを、はっきりと知ることとなりました。 9 JUL 2020 ゴゾhi

YOSHIMASU GÔZÔ
Le vieux poetè

Rivières
Tamagawa
Komagawa
Au-delà des rivières
Etrange
Un hôpital s’élève
Qui disparaît
Rivières traversées
Tamagawa
Komagawa
Avec la voix
Des êtres-plantes
Qui vivent dans ces rivières
Parfois
S’entend
Le cri
Des maladies
Tamagawa
Komagawa
Quand vient la nuit
Poussent les cils
Poussent les cheveux noirs, drus, serrés
Voir des rêves
Doit provenir de ces cheveux-là
Ah!
Quand se dessine une courbe
Belle, amiable,
Sur cette terre
Un chirurgien
Opère l’univers puis ouvre la fenêtre
Peaut-être
Parce pue voir le rêve
Des noirs
Corpuscules
Des pupilles
Fait prendre son essor à l’aile gauche seule d’un cygne
Sur la plage
A l’aile droite blesse
Ah!
Ce sont bien
La Tamagawa
La Komagawa

Translated by Jeanne Sigée

「老詩人」(詩集『草書で書かれた、川』から)

多摩川
高麗川の
川のむこうに
不思議な病院がたっていて
川を渡ると
消える
多摩川
高麗川の
川に棲む
植物たちの
声がして
ときおり
病人の
叫び声がきこえてくる
多摩川
高麗川は
夜になると
繊毛が生え
黒髪でぎっしりいっぱいになる
夢をみるのは
そのせいらしい
ああ
この
地上に
ゆるやかな
美しい曲線の切りこんでくるのがみえるとき
外科医は
宇宙を手術して窓をあける
おそらく
瞳の
黒い
微粒子の夢をみるから
渚に
右翼の傷ついた白鳥の一羽舞いあがったりするのだ
ああ
多摩川
高麗川よ

「酸漿、鏡花、省吾さん」『心に刺青をするように』藤原書店、2016
「酸漿を指に取って、笑を含んで、クウクウと吹き鳴らすと、コロコロと拍子を揃えて、近づいただけ音を高く、調子が冴えてカタカタカタ―」泉鏡花『婦系図』

『静かなアメリカ』(書肆山田、2009)に以下の二章がある。
「オータ・ショーゴさんが教えてくれた、中也の「飴売爺々と、仲よしになり」は、戦後の「コールタール」そして、おもいしじま(蹙)のなみの舟だった、……」
「鏡花フィルム」